第22回 価値観はそれぞれ

子育てゼミナール

今回は、もし自分の子育ての価値観と人の価値観が違うとき。

例えば、こんな事例がある。

〝 子供が将来、自分で自分の責任を取れるように、物怖じせずに自分で対処できるように・・etc 〟

と意図を持って幼稚園に欠席連絡を自分で入れさせた。

母親は配慮して子供の後、電話を代り挨拶をした。

しかし、先生は頑なに子供が電話を掛けること自体を否定した。

「 親の意図がどうであれ、自分で電話を掛けることを覚えさせると嘘をつくことを覚え、勝手に休むようになるからダメです。 」と。

わしはそれに対してまったく納得のいくところはゼロじゃが、考え方や価値観は人それぞれ。

自分とはまったく違う考え方の人もおる。

そしてその背景には運営上のルールやそのひとなりの経験や体験がもとになっとるかもしれんのじゃから、頭ごなしに否定せず、大きな気持ちで妥協できるところは妥協しよう。

そこで持論を押し付けることは子供にとってもプラスになるとは思えん。

命にかかわるものでもなし、子供の心がひどく傷つくことでもない。

そのワンシーンだけで子供の未来を左右するものでもなければ、他のシーンで充分、補えることでもある。

「 どうしてですか?私はこうあるべきだと思います。 」などと相手の価値観や施設のルールを無視し、自分の価値観を理解してもらおう、また、相手の価値観を改宗させようとしてしまうとそれによって得るものは、自己満足にしか過ぎないかもしれない。

それによって、子供が学習するのは 〝 自分の意見をゴリ押しする 〟 じゃ。

養育者が 

「 うちではこんな風にしていますので学校でもこうしてください。 」
「 うちはこんな風にしつけていますから同じようにお願いします。 」
「 うちの生活リズムはこうですので」

などとやっておると、子供は柔軟な姿勢と論理的に考える心を身に付ける機会を失いがちになる。

未熟さゆえに〝 自己主張 〟と〝 我を通す 〟ことの分別をつけられず、不器用な人間関係しか築けなくなるかもしれない。

それなら例えば 「 私はこういう価値観ですが、先生はそうお考えなんですね。わかりました。 」 などと否定もしないが肯定もしない、という姿勢で柔らかく返事をしよう。

そして心の中で〝 私はそうは思いませんが 〟と思っておればよい。

そうすると子供は〝 自分も相手も尊重する 〟言い方を学習する。

子供には、例えば 「 お母さんは自分で電話することが大事だと思っているけど△幼稚園のルールはおかあさんが電話することみたいだから、これからは△幼稚園にはおかあさんが電話するね。他の時は〇君がいつもみたいに電話してね!だって自分で電話できるなんて〇君は本当にすごいよ! 」 と養育者としての考えをきちんと伝えた上で相手を否定することなく柔軟さを示す。

そして必ず子供を褒めよう。何を教えるか。「 人と考え方が違ってもいい。自己主張、自己表現をしてもいい。人と価値観が違うとき、自分の主張を変えてもよいし、価値観を変えなくても、妥協できることは妥協してもいい。妥協できない事、譲れないこと、自分の尊厳が損なわれるなどのときは躊躇せずに自己主張する 」を教えたい。

『 郷に入れば郷に従え 』そんな要領の良さと自尊心への頑固さをもった、心の逞しい子共にしてやろうではないか 。